江田由紀浩の『虎ヲ被レ』

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zoom RSS もしも君のパイオツが今より少しでもカイデーだったなら、僕はこの世の終わりとばかりに泣き叫ぶのだろう。

<<   作成日時 : 2008/07/22 04:38   >>

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「ところで、江田さんのブログには、
『うるせえ!』と言ってやりたくなる魅力がありますね」

このところの虎ヲ被レを“長所:たっぷり読める、短所:さらっと読めない”、
そう分析しながら、僕は2日前能登君から送られてきたメールを読み返していた。
「ところで、」で始まっているのは、
彼の母国語力の足りなさが作用した訳ではなく、
それまでのメールの話題--野茂英雄引退--のせいだった。
「『うるせえ!』か。言い得て明、いや、妙だな」僕は携帯電話をパタリと閉じて、
もう片方の手で既に飲み干されたビールの缶を握り潰し、そして軽く微笑んだ。
慣れないアルコールのせいだろうか、
いやビールの缶は拾っただけなので断固違うのだが、
どういう訳かいつもより右の口角が少し上がっているような気がした。
僕はここぞとばかりに「麻生です」と喉を窮屈にして呟いた。
もちろん札幌市営地下鉄南北線のアナウンス「アサブです」ではなかった。
次期総理候補のいたって簡単な自己紹介「アソウです」だった。
「麻生です」既に口角は同じ高さに落ち着いていたが、僕はもう一度そう呟いた。

その時だった。僕の視界を黒い物体が通り過ぎた。
僕は慌てて周囲を見廻したが何も見当たらなかった。
大きさ凡そ3〜4センチ。「蝉か?」僕は呟いた。
しかし、蝉などいるはずがなかった。確かに夏という季節だけを考えたなら、
“いるはずがない”、その表現は蝉とTUBEにとって、そぐわないのかもしれない。
しかし、僕がいたのは札幌パルコ本館地下2階水着特設会場。
TUBEは分からないが、蝉などいるはずがなかった。
「どういうことだ?」僕は囁いた。
思えば、拾ったビールの缶をここまで持ってきてしまったのも、
それはそれで「どういうことだ?」だが、僕はそれをさておいた。
販売員が僕の声に気付き、ちらっとこちらに目を配った。
僕は咄嗟にもう一度「どういうことだ?」と呟き、
「こんな小さくて全部隠れるのかねぇ」と続け、目の前のビキニを手に取り、
それをまじまじと見つめ、独り言を誤魔化そうとした。
が、逆効果だった。彼女は怪しみに満ちたその眼差しを隠すことなく僕に向け、
そして、レジカウンターの奥へと消えていった。
とはいえ、それは蝉の正体を突き止める必要があった僕にとって好都合だった。
僕は鳴き声を頼りにしようと、目を瞑り、少し口元を歪め、耳を澄ました。
胸の前に置かれた両手にはしっかりと空き缶とビキニが握られていた。
そうして蝉が鳴き出すのをじっと待った。

しかし、5分後、僕の瞼を開かせたのは蝉ではなかった。
「変態座頭市かよ!」
目の前には先月の頭から付き合い始めた彼女、桜井桜子がいた。
正確には旧漢字で櫻井櫻子。名前に“貝”が4つも見受けられた。
そのガリレオ・ガリレイと似た法則の名前の櫻井櫻子、
彼女からのツッコミで僕は目を開いた。
櫻子は試着室のカーテンから顔を覗かせていた。
「どう?似合うかしら?」彼女はそう言うと少しだけカーテンを開き、
ビキニ姿を僕にだけ見せた。そして少し照れながら、こう続けた。
「チャン・ツィイーみたいでしょ?」
カーテンの隙間から見える白のビキニを纏った白い肌はいつもより艶かしく、
何がチャン・ツィイーみたいなのかは分からなかったが、
僕はその姿に心を奪われた。

「ねえ」櫻子は言った。
「え?」僕は聞き返した。
「チャン・ツィイーみたいでしょ?」
彼女が何故それほどチャン・ツィイーを押すのか全く理解できなかったが、
僕は「ああ」と頷いた。櫻子は嬉しそうに「でしょ!」と微笑み、
「どの辺が一番チャン・ツィイーかなぁ?」と訊いてきた。
僕は答えに困った。彼女は僕の顔を覗き込み「ねえ、どの辺?」と迫った。
「ええと、胸の辺りかな」僕は苦し紛れで応え、
「まさにグリーンディスティニーだよ」と続けた。
「グリーンディスティニー?それって映画よね?」彼女は言った。
「そう、映画さ」僕は応えた。
「どういうこと?」彼女の顔に不思議が浮かんだ。
僕は少し考え、「今日の君はいつもより少し胸が大きく見えるだろ?」と言った。
「そうね」彼女はうつむいて、その胸を確かめ、呟いた。
僕は続けた。「だからグリーンディスティニーなんだ」
「うーん。ますます分からなくなってきたわ」。
彼女は首を傾げ、立てた右手の人差し指を頬に当て、考え込んだ。
が、直ぐに彼女は「降参!」と言ってペロリと舌を出した。
櫻子のそのベタな行動は、ベタに可愛らしかった。
僕は少し恥ずかしくなり鼻の頭を掻いたが、直ぐに気を取り直した。
そして、割と得意げにこう言った。
「つまりはワイヤーアクションってことさ」
「ワイヤーアクション?」
「ああ、ワイヤーアクションさ」
彼女は分からないといった表情で「私の胸がワイヤーアクション?」と聞き返した。
僕は「そうさ」と答え、こう続けた。
「グリーンディスティニーも、大きく見える君の胸も、ワイヤーのお陰だろう?」
彼女の瞳が大きく見開いた。「そうか!そういうことなのね!」
「だから今の君はチャン・ツィイーなんだ」僕はしてやったりの笑顔を浮かべた。
苦し紛れの割には、なかなかのものだと思った。
そして「どちらかというと右の胸のほうが、よりチャン・ツィイーさ」
と意味深に言い、「理由は訊かないでおくれよ!」と続けた。
櫻子は軽く戸惑った様子だったが、僕にそれを分かられるまいと笑顔を作り、
「じゃあ、私がチャン・ツィイーなら貴方は誰かしら?」と訊いてきた。
僕が透かさず声帯を閉じ気味に「麻生です」と応えると彼女は「ふふふ」と笑った。

さっきの黒い物体が姿を現したのは、その直後だった。
僕の右斜め前、目線より少し上の高さを再び通り過ぎたのだ。
間違いなく蝉だった。一瞬ではあったが僕には自信があった。
僕は瞬時に櫻子が言うところの“変態座頭市”に成り変った。
櫻子は僕の変化に気付いたらしく「どうしたというの?」と訊いてきた。
「蝉が。蝉がいるんだ」僕はできるだけ声を殺して囁いた。
「可笑しな人。貴方はいつだってジョークばかりね」彼女はそれを信じなかった。
「そうじゃないんだ。今、確かに飛んでいたんだ」
僕はそう言おうと、彼女の耳元に口を近づけようとした時、
蝉は僕の視界を今度は上から下へと一直線に飛び去った。
「足元だ!」僕は大きな声を出した。
素早く僕はしゃがみ込み、床に這いつくばる恰好で蝉を探した。
が、やはり蝉はまた姿を晦ました。
「畜生め」悔しさを隠し切れない僕は、そう言って立ち上がった。

その時、櫻子から頓狂な声が発せられた。「あら!」
彼女は屈み込み、そして閉じた膝を左手で抱え、上目遣いで僕を見た。
「ねえ、貴方を騒がしくさせた蝉ってもしかしてこれのことかしら?」
彼女の右手の親指と人差し指との間には紛れもなく蝉が、
水着売り場を装飾するためのゴムで作られた玩具の蝉が挟まっていた。
「貴方、この玩具が飛んでいたとでも言うの?」
僕は言葉を失った。
「本当に面白い人なんだから」櫻子はそう言って、その蝉の居場所を探した。
壁に貼りついた粘着テープのお陰でそれは直ぐに見つかった。
彼女が壁に蝉を押し付けるその光景を僕はただ黙って見つめていた。
彼女は蝉がしっかりと貼り付いたことを確認すると、
「じゃあ、この水着にするね」そう言い残し、試着室のカーテンを閉めた。
が、直ぐにカーテンの隙間から顔だけ覗かせた。
そして、真っ直ぐな瞳で僕を見つめ、ゆっくりと話し始めた。

「私、思うのよ。もしかしたら貴方の言うとおり、
あの蝉はさっきまで本当に飛んでいたのかもしれないって。
だって貴方、そんな嘘をつく人じゃないって私、知ってるもの。
貴方はちゃんと見たのよ。あの蝉が飛び回っていた姿を」

「えっ」僕の口から微かに音が漏れた。
その瞬間だった。彼女の口元は弛み、目は悪戯色に染まった。
そして彼女は冗談に満ちたいつもより少し甲高い声色でこう続けた。
「でも、それはきっと、ワイヤーアクションね!」
僕は、やられた!という具合に天を仰いだ。
そして、直ぐに彼女を見つめた。
目が合った僕らは、まるで図ったかのように同時に笑った。
笑い声は札幌パルコ本館地下2階に響き渡った。
誰かが遠くで「うるせえ!」と怒鳴った。
僕は振り返り、辺りを見廻した。が、怒鳴ったらしき人は誰もいなかった。
「ねえ」僕の背中に櫻子が言った。
「ん?」僕は振り向いた。
すると彼女は笑顔を浮かべ、こう言った。
「きっと能登君よ」
彼女はシャッとカーテンを閉じ、直ぐに着替え始めた。

僕は一人微笑んだ。また右の口角が少し上がっているような気がした。
僕はここぞとばかりに喉を窮屈にし、麻生の声でこう言った。
「ミーン、ミンミン、ミーン」
7月の麻生は蝉によく似ていた。
僕はほくそ笑み、右手の潰れたビールの缶を蝉に見立てて、空に遊ばせた。
「店長、あの人です、怪しい人って」
販売員の声は、あの時の僕の耳には届いてはいなかった。

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コメント(18件)

内 容 ニックネーム/日時

パタリ、でゎなく、
バタリ、なところが、
その心情の重さか、
もしくゎ、
携帯の重厚感を表しているのでしょーか…
ああ、デコ電ですか?

能登さんにも納得。
しかしあたしにとってゎ、
あたりめのよーなモノです。
あたりめか、
もしくゎ、
グミか。

グミゎ…最強です。

きりか。
2008/07/22 10:06
うーん。
途中からなんだか訳がわからない世界に行ってしまった気分になりました。。

江田くん、その心は。。
美紀
2008/07/22 13:21
うるせぇっ!とは思わないけど、暑苦しいっ!と思いながら読んだことはここだけの話。・・って、書いちゃったらダメか。。
今度テレビで麻生さんを見た時には「ミーン、ミンミン、ミーン」て言えっ!って期待しながら見ちゃうじゃないですかー。

ところで、なんでビールの缶拾ったのさ?
ちか
2008/07/22 16:05
圧巻…@o@あなたのそのワイヤーアクションに

7/27(日)VINNIES同席競演をこの上なく楽しみにしておりますので^^かしこ
「実験的ポップ」Vo.よっち
URL
2008/07/22 17:51
江田さん、さすがですね…。
『グリーンディスティニー』や麻生さん、、ツボにハマりました(≧∀≦)
それから、先月からブログを見ているのに今日初めて、
江田さんが
一人ひとりにコメントをしてくれている事に気付きました!! 素晴らしいです。
天は、2物も3物も 与えていますね。 カッコ良すぎだなぁ (*^ω^*)
美貴
2008/07/22 18:17
私は、ここだけの話、右のパイオツの方がちっとデカイです。 普通は心臓がある左側が大きいのにね。
ハッ!…失敬!ではゴメン
ダンカン蟻がとう
2008/07/22 18:40
江田さん初めてまして!
山口県からこんばんわ!北海道からこ〜んな離れたとこで応援してます♪
あたしも江田さんの安藤見たかったよぉ(ノ><)ノ
また福岡に来てくれたらうれしいなぁ♪


夕☆
2008/07/23 00:03
今回は全部読みました(*´∇`*)仕事中の休憩にひたすら(笑)
しかし…江田さんが女性用の水着を持って眺める姿…想像出来ます(o≧∇≦)o
さすがですね、江田さん♪
ゆう
2008/07/23 06:28
江田さん初めてまして!
山口からこんにちわ!北海道からこ〜んな離れたとこから応援してます♪

あたしも江田さんの安藤さんが見たかったよぉ
(ノ><)ノ

また福岡に来てくれたらうれしいなぁ
夕☆
2008/07/23 08:17
実際のところ、江田さんはカイデーなパイオツがお好きなんですか?
カイデーならカイデーな程、嬉しくて泣き叫んでしまうものなんでしょうか…。
あ、ワイヤーアクションの素晴らしさに感激した泪ですか?
かなこ
2008/07/23 13:04

あると思います!
masaco
2008/07/23 13:12

江田さん横レスすみません。
どーしても言いたくて…
我慢できませんでした…

>masacoさん
エロ詩吟が浮かびました(笑)

きりか。
2008/07/23 14:50
ああもう笑った…苦しい〜…、「変態座頭市」って。
「降参!」です(≧▽≦)
でももっと読みたい〜。
その
2008/07/24 00:36
…なんだって?


えぇ、えぇ。 Fカップですけど(謎
かっぱ
2008/07/26 17:33
母国語力に弱い、生粋の日本人のハミィです。
夜遅くに、しつれいおばこきます。

突然質問ですが、江田さんが書くブログって事実なんですか?
素朴な疑問です。

って江田さんはやっぱり、パイオツカイデーが好きなんだ・・。

へぇ〜・・

そりゃーそうですよね。

まぁ・・ビキニみて独り言を言う以前に
水着会場にビール缶持ってる時点ですでにアウトでは?
どこまでが事実か知りませんが(笑)
ハミデント
2008/07/28 00:49
皆様。

残念ながら、江田さんは貧乳好きなハズです(^^;

そしてそんな私も、大して使ってもいないのに最近E→Fにランクアップしてしまい、江田さんファンとしては残念な限りです。

とりあえずは垂れないようにワイヤーアクションで形を整えてます!
のこ
2008/07/28 20:08
きりか。さん」「スルメ」。「スル」というのが縁起が悪いので「アタリ」にして「アタリメ」と呼ぶらしいね。

美紀さん」訳の分からない世界へ誘われたのなら大正解。愛情たっぷりに「なんだそれ!」と突っ込んでね。

ちかさん」何故だろう。何故“僕”は拾ったのだろう。誰も知り得ない謎。嗚呼、だから読書はやめられない。

「実験的ポップ」Vo.よっちさん」コメントありがと。GIGも最高に楽しかった。またご一緒したいものだ。

美貴さん」「ちゃんと読んでるよ」って分かって貰いたくてね。あと、少しでも多くの人に書いて貰いたいしね。

ダンカン蟻がとうさん」あら!珍しい!ギーミーがカイデーだなんて。じゃあキミは左の方がチャン・ツィイーなのね。

夕☆さん」ありがとう!生まれて最も山口県人に近づいた瞬間だ!ラジオにメールしてくれたら地図を塗り潰せるぜ!

かなこさん」チャイチイなほうが好きだね。“この世の終わり”は“嬉しい”とも解釈できるのか。気をつけねば。
江田
2008/07/31 01:04
masacoさん」エロ詩吟、素晴らしいね。「舐めてて〜」って、もう出だしからバカバカしいもの。秀逸だ。

そのさん」どんな状況かイメージできると楽しいよね。目を閉じてビキニを持って集中してる様はバカバカしい!

かっぱさん」エ、エフカップ?!そのサイズを生で目にする機会が今後のオレにはあるのだろうか。

ハミデントさん」“長所:たっぷり読める、短所:さらっと読めない”というブログの分析は事実だね。

のこさん」“大して”って付けるあたり“少しは”使ってるということなのだろうね。エロテロリストだね。
江田
2008/07/31 01:04

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